あなたがビジネスマンで接待の幹事を引き受けた時、完全に失敗では無いけどなんとなく「思っていたのと違うなぁ」とか「今日の雰囲気微妙だったなぁ」なんて経験ありませんか?
これからお話しすることは、あなたが接待をする時に少しだけ役に立つかもしれません。
長くイタリア料理店でソムリエなんて仕事をしていると、お客さまとの関わりの中から色々見えてくる事があります。
経験豊富なイタリアンのシニア・ソムリエがレストランに於ける接待の極意を伝授します。
会食当日までの準備
さて、前回予約までを案内しました。
ゲストはもちろん、あなたの上司であるホスト側の嗜好などを考慮したお店選びが出来ているはずですので、今回はレストランにて、実際に料理やワインなどをオーダーする辺りのちょっとしたコツをお話ししましょう。
あなたは、当日までに参加メンバー全員へメールなどでお店の情報、特にアクセス方法を配布したり、当日のタイムスケジュールを擦り合わせたりと、抜かりなく進めましょう。
見落としがちなのは、お店への予約名。
参加メンバーによっては会社名が良い場合もあれば、個人名の方が都合が良い場合もあるでしょうから、しっかり共有しましょう。
イタリア的食前酒
イタリア的食前酒のオススメ!
代表的なのは、BIRRAビッラ=イタリアンビール。
北から南までいろいろなビールをイタリアでも造っています。最近では、世界的にクラフトビールブームです。イタリアでもご当地メーカーみたいなのがあって、面白いビールをリリースしていますね。
次に、SPUMANTEスプマンテ=イタリアンスパークリングワイン。
軽くコスパの良いものにヴェネト州のPROSECCOプロセッコがあります。本格的にいきたければ、FRANCIACORTAフランチャコルタ、シャンパーニュに引けを取らない旨味のあるものが多い。トレンティーノのFERRARIフェッラーリ社のシャルドネ100%を使ったスプマンテも人気ですよ。
スプマンテをベースに使ったミモザカクテルやヴェネト州の有名なレストラン、ハリーズバーからはじまった桃とスプマンテのカクテル、ベッリーニも美味しいですよね。
ミモザの花は黄色いので通常のオレンジジュースを使いますが、シチリア島特産のARANCIAROSSA=ブラッドオレンジのジュースをスプマンテで割っても良いですね。
イタリアンカクテルも根強く人気で、代表的なミラノのCAMPARIカンパリリキュールをソーダで割ったり、オレンジジュースで割るのも良いです。
カンパリを低アルコールにしたようなAPEROLアペロールリキュールは11%なんでカンパリの24%から比べると半分で飲みやすい。これをスプマンテとソーダで割ってオレンジなどを飾ると人気のカクテルSPRITZアペロールスプリッツになります。
VERMOUTHイタリアンヴェルモット系のカクテルも食前酒には向いています。
そのままオンザロックスタイルでも、アメリカーノやネグローニ、マティーニやマンハッタンなどもヴェルモットを使っています。
イニシアチブはホスト側が取ろう!
ゲスト、ホストがお店に集まったら、さあ、いよいよ会食のスタートです。
食前酒から始まり、お食事のオーダーやワインやミネラルウオーターを的確に良いタイミングで注文するにはどうしたらいいでしょう?
ソムリエからのこの答えは、イニシアチブをホスト側がしっかり握る事だと思っています。
接待に使える予算から見ても、会食の時間をコントロールするのも、幹事のあなたの上司がメインゲストとのビジネストークに集中する為にもホスト側で全てのオーダーを決めるのをお勧めします。
一つ例に挙げると、その会食に「ワイン好きのゲスト」が居たとします。
ホスト側が気を遣って「〇〇さんはワインにお詳しいので、ぜひお好きなのを選んでください。」
なんてその方にワインリストを渡して丸投げしたりしていませんか?
ワイン好きのゲストは、この時めちゃくちゃ困るんですよ、実際は。
ワインの値段ってそれはもうピンキリなので、自分が支払いをしない時に好きなワイン選んでって言われても、例えば1万円のワインが、ホストにとって高いのか安いのか判らずに選ぶって難しいんですよ。
ワインを知っている方であれば、あるほど悩んでしまう。そんなもんなんです。
この時の正解は、メインホストであるあなたの上司、もしくは幹事のあなた本人がワインリストを持って、ゲストには好みだけを聞いて選ぶ事です。
ホスト側がワインに詳しくなくても、お店のワインはお店の人が一番理解しているので、ソムリエではない人に相談しても予算の中で美味しいものを選んでくれるはずです。
これは、料理に関しても同じ事が言えます。
食事の量、質、値段、好みを考慮してホスト側がしっかり決めた方がいいでしょう。
上記の例は一般的なものを挙げましたが、もちろんゲストホストの関係性や支払いも折半になることや当てはまらないケースは無限に考えられますので、基本的な考え方として覚えて置いてください。
ソムリエ直伝、ワイン選びのコツ
では、イタリアワインを選ぶに当たって、役に立つコツを紹介しましょう。
まず、基本的にイタリア半島は地中海にニョキっと飛び出た形なので、フランスやドイツに比べ暖かいですし、「全ての土地が」と言って良いくらい、ワイン造り葡萄栽培に適しています。
そこに、近年の醸造学の革新的進歩や造り手の努力が重なって、美味しいワインが格段に増えてきました。
なので、そんなに気を張らずになんとなく注文しても、そこそこ美味しいワインに出会えるでしょう。
とはいえ、接待なので少しだけ成功の確率を上げるのでしたら、これからお話しすることが役に立ちますよ。
白ワイン選びのコツ。
イタリアで白ワインの名産地、フリウリ-ヴェネツィア-ジュリア州。
山岳地帯のミネラルを感じる清涼感、バランスが良く上質なワインが多い。
国際的に人気のシャルドネ種やソーヴィニョン種もありますし、イタリアならではの土地の品種、ピノグリージョ種、フリウラーノ種、マルヴァジーア種などなどお勧めは沢山あります。
中部イタリアのマルケ州はヴェルディッキオ種と云う、アフターに旨味のある苦味がほんのりある美味しい白ワインがあります。メーカーによってかなり違うので、注意が必要ですが。
近年人気はシチリア島の白ワインでしょう。
プラネタ社、クズマノ社、ドンナフガータ社のシャルドネ種のワインは果実味豊かなシッカリ系でカリフォルニアワインやオーストラリアのシャルドネ種を良く飲む方にオススメです。
フランスの「シャブリ」の様なワインを選びたいとしたら、ピエモンテ州の「ガヴィ」やヴェネト州の「ソアーヴェ」が万能です。
ナポリの白ワインでファランギーナ種、グレコ種、フィアーノ種がありますが、どれも良質なものが多いので、機会があれば試してみてください。
赤ワイン選びのコツ。
イタリアの赤ワインの名産地はピエモンテ州とトスカーナ州の2大産地が基本です。
ここを攻略するとイタリアワインが好きになっていくかも!
フランス、ブルゴーニュの赤ワインはピノノワール種を使っていて、「ロマネ-コンティ」を筆頭に世界的人気のエリアです。ブルゴーニュの北のジュブレ-シャンベルタン村で造られる赤ワインがピエモンテ州の有名な「バローロ」や「バルバレスコ」に似ています。
葡萄品種も産地も違うんですが、おそらく畑の環境が似ているのでしょう。
特にモダン系のバローロボーイズたちのワインや新樽を使った造り手は、ブルゴーニュの造りを参考にしています。
ですから、ブルゴーニュの様な赤ワインを欲しい場合「強すぎないバローロやバルバレスコ」を選ぶと良いでしょう。
では、トスカーナ州のワインはと云うと、ボルドーワインに近いんじゃないかと思います。
スーパー・トスカーナと言ってボルドーで使われているようなカベルネソーヴィニョン種やメルロー種、カベルネフラン種、プチヴェルドー種使うワインが一部にありますので、ボルドーの赤ワインが好きな方やカリフォルニアワインをよく飲む方には馴染みやすい味わいです。
特に、トスカーナ州でもボルゲリ地区のカベルネ系やメルロー種のワインはずば抜けていますので、チャンスがあれば頼んでみてください。
トスカーナ州には後2つ特筆すべきワインがあります。
「キアンティ・クラッシコ」と「ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ」です。
どちらのワインも造り手が沢山ありますので、そこを理解するのは時間がかかるのですが、ざっくり解説すると、キアンティは野菜料理に抜群の相性があってイタリアのほろ苦い野菜とかの前菜や様々なパスタやリゾットなどのお供に最適。
一方ブルネッロは、血の滴る様な赤身のステーキに合わせる。
フィレンツェ風T -ボーンステーキや鹿肉やローストビーフ猪の料理など赤い肉が美味しそうです。
特にトスカーナの料理を得意としているレストランで接待の場合、以上のことを覚えておくだけでも、倍楽しめますよ。
他にもイタリアの赤ワインのオススメは、色々ありすぎて書ききれませんが、軽く紹介しておくと、
ヴェネト州の「アマローネ」は陰干した葡萄を使うので凝縮した複雑さのあるワイン。
アブルッツォ州の「モンテプルチアーノ」は色が濃く果実味豊かでバランス良く、コスパも。
ナポリの「タウラージ」南イタリアのバローロと称される、硬さがあるので要注意。
シチリア島の赤ワインは軽めから重めまで表情豊か、「ネーロダヴォーラ種」はオススメ。
コメント