ワイン用のグラスって何が違う?
リーデル社のワイングラスワイン好きのあなたは普段、どんなグラスを使っていますか?
食器と同じでこだわりを持っている方も多いでしょう。はたまた、普段飲みなんかコップで良いんだよ!なんて人もいますよね。
日本ワインで比較的安価な一升瓶のワインなんかをコタツに入って、焼き魚とか肉じゃがとか食べながら湯呑みで味わうなんてのもオツですが。
たまの休日やハレの日には、良いワインを開けたくなりますよね。
当然、レストランで飲むならそれ相応のグラスを出してくれますが、さて、家庭ではどうしましょう?
今回はグラス選びのコツをソムリエの視点で解説していきます。
これを知っておくと、プレゼントとかで相手がワイン好きと判っていたら選びやすくなりますし、せっかく開ける取って置きのワインが何倍にも美味しく飲めますよ。さあ、やって行きましょう。
ポイントは香りとフレーヴァー 理想的なサイズとは?
基本的な考え方で話すと、ワインを味わう上でソムリエが気にしているのは、味よりも香りを重視します。もちろん、酸、甘味、アルコール、渋味や苦味などワインが持っている味わいも大事なんですが、近年では葡萄栽培をはじめ醸造学も格段に進歩していて、そのお陰でバランスの良い上質なワインが増えています。
コンビニやスーパーなどであまり深く考えずに購入したワインでも、「割と美味しいじゃん!」みたいなことってありますよね。20年くらい前には考えられないほど、美味しいワインが増えています。
ですので、そのワインが持っている「個性的な香り」を引き立たせることで、さらに美味しく楽しめるんです。
では、まずグラスの「サイズ」について解説しましょう。
最近ではバカでかい金魚鉢みたいなクリスタルグラスもありますが、あれなんかいつ活躍するのでしょう?
小ぶりなグラスと大きなグラスはどう使い分けているのでしょう?
その答えは、「フレーヴァー」の強さと余韻の長さです。
ご存知の通りワインの値段はピンキリですね。
では、高いワインは一般的に何が良くて、安いワインとは何が違うかというと、この「フレーヴァー」なんです。高いワインには、「渾々と湧き出てくる芳しい香り」(=フレーヴァーの強さ)があります。そして、飲んだ後、口の中にその「フレーヴァー」がいつまでも漂っている状態(=余韻が長い)
これを最大限に引き立てようとすると、大きめのグラスを選ぶ事になります。
逆に味わいは良いけど、香りは立たない様な並のテーブルワインなら小ぶりのワイングラスを選びます。香りの立たないワインを大きなグラスで飲むと、アルコールの香りばっかり強調されるので、大きすぎるグラスは向かないのです。
キンキンに冷やして飲むと美味しい白ワインや発泡性のワインも、冷やす事で香りが弱くなっているので、小ぶりのグラスでいいでしょう。大きなグラスだと温度も上がってしまうので。
長期熟成をした高級なシャンパーニュや樽熟成をした強い香りの白ワインなんかは冷蔵庫の温度より少し上げて飲んだほうが美味しい場合がありますので、大きなグラスを使うこともあります。
簡単にまとめると、「安いワインは小さいグラス」「値段が高いワインは大きなグラス」と最初は覚えておいて間違えはないでしょう。
リーデル社のワイングラスボルドータイプとブルゴーニュタイプどっちが良いの?
次にグラスの形について
赤ワイン用のグラスでよく見る形「ボルドータイプ」と「ブルゴーニュタイプ」の2種類はどのレストランでも用意してあるんではないでしょうか?この、フランス赤ワインの2大名産地の名前の付いたグラスはそれぞれの産地のワインに適した形と言われています。
ボルドーワインと言えば、シャトー・マルゴーやシャトー・ラフィット・ロートシルトなど有名なワインがあり、カベルネ・ソーヴィニョン種やメルロー種の葡萄を使い、比較的色が濃く、シッカリとした高級ワインのイメージがあります。フランスワインの女王と呼ばれます。
一方、ブルゴーニュワインは、有名なものではロマネ・コンティ、シャンベルタンやシャンボール・ミュジニーなどがあり、全てピノ・ノワール種100%で造られるのが特徴。ボルドーワインが黒を含んだガーネット色がベースなのに比べ、美しいルビー色の透明感のある色調がブルゴーニュワイン。
果実味豊かでシルキーな舌触りでフランスワインの王様と呼ばれます。
さて、こうして観ると特徴がまるで違いますよね?
オーストリアのクリスタル・グラス・メーカー、リーデル社がこの「ボルドータイプ」と「ブルゴーニュタイプ」の基準になるので、解説していきます。
この2つのグラスの共通点は、通常使われるワイングラスよりも大ぶりである点。
それだけこのグラスに合うのは、そこそこ上級のワインですよ。
と、云うこと。
一回のグラスに注ぐワインの量は小さいグラスだろうが大きいグラスだろうが、多くて100ml程度です。
これで変わるのは、グラスの空きの空間と酸素の量。
酸素にワインが直接触れて、しかも表面積も大きいことから、良くも悪くも酸化します。
空間が大きく空いていて、酸素が豊富なボルドーやブルゴーニュのグラスを使うときは、その酸化に耐えられる酒質の頑丈な上質ワインが合いますよってことです。
次は、形の違いによる個性ですが、ボルドータイプは底から真っ直ぐ立ち上がった「円筒形」の形。
ブルゴーニュタイプは先がつぼまった「円錐形の先を切った」形。
ボルドータイプの様に先端が開いていると、注いだワインの香りがどんどん外に逃げていきますよね?
そして、代わりにフレッシュな空気が入って来るので、さらに酸化が促されます。
一方、ブルゴーニュタイプの様に先端が閉じている場合は、一定の酸化をしながらもある程度までで止めておくことが出来ます。
この違いは、想像するより大きいので覚えておくと役に立ちますよ。
ガッツリ色の濃いシッカリ目のワインならボルドータイプ。
優しくデリケートならブルゴーニュタイプを選ぶといいでしょう。
葡萄品種別で言うなら、カベルネ系、メルロー、シラーなどはボルドータイプ。
ピノノワールなど色調が薄い系統はブルゴーニュタイプと覚えておきます。
上級編、ソムリエ的グラス選び
基本的な考え方が理解できたら、上級編です。
ピノノワールだって綺麗なルビー色が基本ですが、DRCやドミニクロランだったりの造り手はとにかくパワフルなマッチョ系のブルゴーニュの典型ですし、ボルドーって言っても5大シャトーみたいなカベルネばかりでは無いのですから、ブルゴーニュなのにボルドーグラスの方が美味しく飲めたり、カベルネなのにブルゴーニュグラスの方が良かったなんて場合もあります。
この悩ましい問題を一番スッキリ解決する為には、自分がこのワインを「どう飲みたいか、どう楽しみたいか」または、一緒に飲む相手やお客様に「どう飲んでほしいか、どう楽しんで欲しいか」をはっきりさせる事です。
僕はイタリアンのソムリエなのでイタリアワインで解説します。
イタリア料理店では、トスカーナ州の赤ワインはボルドータイプのグラスで提供することが多いのです。これは、「トスカーナワインはどちらかと言えばボルドーワインに近いよね」って事なんですが、一部の高級ワイン以外はそんなことは無くって、むしろデリケートでエレガントなワインも沢山あります。
ソムリエとしてお客様から、「あまり重過ぎると好みじゃ無いのだけど、肉料理に合わせて上質な赤ワインを勧めてほしい。」とのリクエストがあったとします。
ここで、僕がキアンティ・クラッシコの中から、サンジョヴェーゼ種の扱いに定評のある造り手の物で、渋みの優しいワインを選んだとしたら、間違いなくブルゴーニュグラスで提供します。
重すぎないサンジョヴェーゼ種のワインをソムリエ的に
『このワインは、味わいの複雑さや力強さではなく、馨しい香りを前面に出して楽しんで欲しい』
と、いう思いがグラス選びに繋がります。
さらに感覚的な事ですが、恐らく先ほどのリクエストをされるお客様は、ブルゴーニュのワイン好きな確率が高いです。
すると、他のお店でもブルゴーニュタイプのグラスで提供される事が多いはず。
全然違うワインでも見慣れた形のグラスで飲むことで、安心感が増すと思われます。
ソムリエはこうしたお客様のプロファイルをする事で心地よい時間をプロデュースしています。
最後に、泡用のグラス何がいいの?
最後にシャンパーニュを代表する発泡性のワインには何が良いのという問題。
今回のこの記事を、最後まで読んだあなたなら解ってきたと思いますが、泡に関しては「ぶっちゃけ何でもいい」が答えです。これこそあなたの美的センスのままに、デザイン的に優れているものを選んだらいいと思っております。
なぜかといえば、シャンパーニュを飲むシチュエーションってお祝いやハレの日で、あなたのテンションもいつもより上がっている事でしょうから、味がどうのなんて粋じゃ無いことは放っておいていいんじゃないのって事です。
でも、家庭で使うシャンパングラスの選び方のコツはあります。
背が高すぎるグラスは、洗いずらく、割りやすいので注意です。
細すぎのグラスもスポンジなどが入らないので、結果割りやすいです。
かといって小さ過ぎてもカッコ良く無いので、いい感じの大きさを選ぶと良いでしょう。
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